未接道地の借地権付建物を相続

未接道地の借地権付建物を相続された方からのご相談|兵庫県神戸市K様から不動産相談

今回は兵庫県神戸市のK様から相続でのご相談です。

このページの目次

  1. ご相談内容
  2. 相談時の状況
  3. 解決のポイント
  4. 未接道地借地権付建物の地主買戻し売買
  5. 不動産相談コンサルタント:山田のコメント

1.ご相談内容

K様のお父さんが亡くなった事により、横浜にある実家を相続した。初めての事でよく解らず、親戚の不動産関連に詳しい人や知り合いの不動産屋に聞いたところ、未接道である為、再建築が出来ないと言われた。

また土地は他人の敷地であり、建物のみがお父さんの持ち物である。このような不動産だが、売るにも売れないし、地主に返すしかないのか?と言うご相談です。

2.相談時の状況

  • ご相談日の1カ月位前にお父さんが亡くなった。現在は空家
  • 建物の相続人はK様と妹がいる。
  • K様は神戸に家を所有しており、実家に戻ってくることはもうない。
  • 親戚の不動産関連に詳しい人と言う方に査定書みたいなものを作って頂き、物件調査をしたが、未接道地という事が解った。
  • 借地権契約の当事者である地主は亡くなっており、娘Yが相続していてYの名義。
  • 借地権の地代は直接Yに払うのではなく、地主のご長男であるHが窓口となって、Hに纏めて1年分ずつ払っている。
  • 借地権の更新時期が2カ月後に迫っている。
  • Hに、K様のお父さんが亡くなった事を伝えたら、建物をK様の名義に相続登記し、更に更新料を払ってから建物をそのまま返してくれ。と言われた。
  • K様は価値が無い上に売却できず、地主に返すしかない。と思っている。

3.解決のポイント

  1. 借地権契約の当事者である、地主Yと直接話しをする必要がある為、地主Yの連絡先を調べる。
  2. 再建築をする上で借地権付建物の問題点が何かを明確にし、査定額を出す。
  3. 旧法(20年)の借地権であり、2カ月後に借地権の更新時期が来る。
  4. 借地権契約書には、買取請求権の禁止特約が入っていない。
  5. 売買が可能な場合、地主の承諾が必要になる。
  6. 法令上の制限が変わっており既存不適合の物件であるか、また配管等の越境が無い。

4.未接道地借地権付建物の地主買戻し売買

未接道地借地権付建物の地主買戻し売買

4-1.現状

K様と妹が未接道地の借地権付建物を相続したが、親戚の話しや知り合いの不動産屋によると価値が無く、再建築出来ないのではないかと言われた。その為、借地権付建物である為、売買も出来ず、地主に返却するしかないのかという事。

K様としては、自分なりに調べた上で八方塞がりになり、何かいい方法はないものかと言う藁にも縋る思いで、弊社に相談に来られた事と思います。

4-2.対応

親戚の不動産に詳しい人が作成したと言う査定書を見させて貰った。そうすると隣地にマンションが建っており、マンションの敷地が、今回の対象物件の前面道路まで伸びている。

また反対側には国有地があり、その先には住宅が広がっている。完全に他人の敷地に囲まれた土地になっていた。

ただ気になる事に対象物件は建築確認が降りている為、直ぐに建築基準法道路種別で調べた所、対象物件の前面道路部分が建築基準法42条2項道路になっている感じがした。

  • 借地権契約書を見させて頂き、地主への借地権買取請求権の禁止特約が入っていない事を確認。
  • K様に本当はどうしたいのか聞くと、いくらでも良いから本当は売買したいという事なので、建て替えが出来るという事を前提に、K様にその場でおおよその査定額を提示。第三者への売買の場合と地主が買取りした場合の条件について伝えた。
  • 第三者へ売買するためには前面道路について、マンション管理組合による通行承諾が必要になる、また地主の承諾が必要になり、承諾料がかかるので、あまり現実的ではないと言う事を伝えた。
  • 地主への買戻しをする場合には、更地価格を確定する為、建物解体見積りを取り、交渉範囲の値段を決めていった。
  • 地主Y直接交渉をしていくため、K様と媒介契約を結び、委任状を書いて頂き、地主Yのお兄さんHから連絡先を聞いて貰うようにし、直接交渉、売買をする方針で対応する事にした。

4-3.解決

  1. 建築指導課で再建築が出来るという事を確認した。但し、マンション管理組合の通行承諾が必要になる可能性があるという事を確認した。
  2. 地主Yと交渉していくのに、建物解体見積りを取得。再建築が出来る事を前提として交渉額を800万として地主Yと直接交渉する土台を作った。
  3. 地主Yとの連絡は、直接電話するもなかなか繋がらないので手紙を書いたりしたが、何とか借地権の更新期日前に連絡を取る事が出来た。全ての経緯を話し、800万で買戻しをして欲しい旨、伝えたが、地主Yは結婚して近くに住んでいるが今はお金が無いと言う。自分でも確認したいので少し時間を下さい。という事で1回目の面談は終了した。
  4. 地主Yからの連絡を待っている間に、借地権の更新期日が到来、K様よりどのようにしたら良いかという事で質問があった為、毎月の地代は契約書通り払うように伝えた。
    そうしたら、数日してK様より、「地主Yの兄Hへ支払おうとしたが、受け取って貰えない」と言う連絡が来たので、仕方なく地代を供託する事にした。
  5. その後、地主Yから連絡が来て、解体費・更新料等、色々考慮して200万だったら買い取っても良いという事だったので、K様と相談し、最終的に350万で借地権付建物の買戻し売買する事になった。
  6. しかしながらK様の相続登記がまだだった為、急いで司法書士に頼み、K様名義に相続登記をして貰い、無事売買は終了した。
  7. その後、前面道路について、マンション管理組合の承諾が貰えるか不明だったが、管理会社の担当者と一緒にマンション管理組合に事情を話し、マンションの敷地内にライフラインの全ての配管等が入っている為、将来的に問題になる可能性がある事を伝えました。マンション管理組合も事情を把握して頂き、無事書面を交わす事が出来ました。
  8. これで、建物の再建築も堂々と出来る状態になった。

5.不動産相談コンサルタント:山田のコメント

不動産相談コンサルタント:山田

今回のケースは 借地権付建物を相続すると言う、よくある話しでした。ただ、借地権に馴染みが無いK様は親戚や、専門家と言う人達に意見を聞き、色々な情報や知識を入れる事で混乱してました。

順を追って紐解いていけば、そんなに難しい事ではないのですが、不慣れな事や知らない事があると、どうしても冷静さを失ってしまうのが人間なんだと感じました。

地主だからと言っても対等の立場ですし、お互いの意見を調和していくことで解決出来た案件だと思います。

人の意見に左右されず、自分がどうしたいのか。その為にどんな方法があるのか冷静に物事を見て行くことが大切だと改めて確認させて頂きました。

今回は自分達の意見だけを相手に伝えるのではなく、現実を受け入れお互いが調和する事で当事者が満足する成果が得られた事と思います。