権利錯誤による不動産売買

権利錯誤による不動産売買のご相談|長野県松本市K様から不動産相談

今回 ご紹介させて頂く不動産相談事例は、長野県松本市のK様から不動産売買のご相談です。

《目次》

  1. ご相談内容
  2. 相談時の状況
  3. 解決のポイント
  4. 案件により題名を決定
  5. 不動産相談コンサルタント:山田のコメント

1.ご相談内容

K様が住んでいる職場兼住まいの不動産賃貸物件を、地主から購入したいというご相談。

2.相談時の状況

  • 600坪の敷地に33坪くらいの平屋が建っており、現在賃貸中。
  • 建物はK様の住まい兼、障がい者向け職能支援施設になっている。
  • 市街化調整区域内。
  • 建物は増築しており一部が未登記。
  • 湿気が多く、水周り付近の床下が腐っている。
  • 建物が建っているのに、土地の地目が「山林」になっている。
  • 国の事業により、元々の1宅地だった土地が3宅地に分筆されている。
  • 3つの土地のうち、1つに地下水路が流れており、地役権が設定されている。
  • 建物登記簿の家屋番号と土地地番が一致しない。

3.解決のポイント

解決のポイント

  1. 市街化調整区域内であり、建物が再建築出来るか解らない為、再建築が出来るかどうかで資産価値が変わってくる。
  2. 建物老朽化の為、修繕工事の必要があるが建物が大きいので、費用が高い。
  3. 建築確認を取得し建物が建っているにもかかわらず地目が山林である。建築許可を取得する為には宅地に変更する必要がある。
  4. 建物が建っている面積がわずかで、広大な空地(一部山林)になっており、法務局から分筆を言われる可能性がある。
  5. 要件を建物建築当時、1宅地だったものが3宅地に分かれており、3宅地全部を宅地にしないと満たさないので再建築が出来ない。
  6. 建物の表示登記が間違っている(権利錯誤)
  7. 地下水路の地役権を設定した管轄組織が業務完了のため存在しておらず、契約書の控えがあるか解らない。

4.権利錯誤の売買

権利錯誤の売買

建物が再建築出来ない状態

賃貸中の現在使用中の建物を売買したいという依頼。

見た感じには普通の土地建物に見えたが、調べていくうちに市街化調整区域(※市街化を抑制する区域)にあり、建築基準法改正の年に建築確認を取得しているのに、地目が宅地に変更されていない。

売主は、戦前から相続で土地を取得しており、途中で地番表示が変更になった。

売買を行う上で様々な問題が露呈

更に農業水路として地役権を設定する為、国の方で分筆がなされている事が解った。また、土地の地番表示の変更登記をした際に、建物の表示登記の変更を忘れていて、旧地番表示のままになっているという状態。

このように、売買を行う上でいくつかの課題があり、建物は再建築が出来ない状態であった。

このまま売買をすると、買主に不利な状況が想定されるため、これを改善して売買をする必要がある。

不動産売買までの対応

  • まずは、法務局で戦前の登記まで遡って、表示登記が錯誤になっている理由を調べた。また表示登記を更正出来るのか確認した。
  • 役所の建築指導課へ行き現状を説明、どのようにすれば市街化調整区域内の住宅建築の特例を適用する事が出来るようになるか協議し、売買までの道筋を作った。
  • 農業用水としての地役権が設定されているため、権利が及ぶ範囲を確認、また建物表示登記の更正が必要になるので役所や法務局と折衝出来る家屋調査士を探し、綿密な打ち合わせをした。
  • 売主の責任範囲を明確にし、買主に市街化調整区域の住宅の為、売買後も建築審査会の判断に依って、再建築が出来ないリスクがある旨説明、売主・買主共に現状から将来においての状況を詳細に説明し理解してもらい、それから売買した。

法務局で地目変更の更正登記について折衝

  • 建築指導課と事前協議をし、建築確認取得時(昭和56年8月)から地目登記を山林から宅地であった事を更正登記できれば、建築審査会に申請出来る要件を満たす事を確認。更に農業水路用に元々1宅地だったものを3宅地に分割している為、3宅地とも地目を山林から宅地にする必要がある事を確認。土地家屋調査士へ依頼し法務局と折衝、3宅地とも地目を宅地に変更することに成功した。
  • 建物表示登記の錯誤原因を追究し、土地家屋調査士へ依頼、法務局で更正登記をした。
  • 農業水路に関しては大元が農林水産省で有る事を確認し、他県にある機関に問い合わせ、当時の契約書を確認。所有者変更の覚書で対応した。

5.不動産相談コンサルタント:山田のコメント

山田武久

今回のケースは見た感じには広い敷地の一軒家で、普通の売買に見えますが、市街化調整区域内の既存宅地として建築審査会が客観的判断を出来る材料を揃える事が出来るかで、資産価値の状況が大幅に変わってくる物件でした。

複数回による市の担当者との打ち合わせが功を奏し、解決方法として道筋が出来ました。

権利の錯誤等、法律や時間の壁があり、法務局と交渉をして頂いたベテラン家屋調査士さんに助けられた案件です。

関係者の方の善意を引き出すことが解決の要因

このようにうっかりミスや、建築当時の勘違い等で起きた原因で、時間が経つにつれ問題が大きくなり、解決にそれなりの費用と労力を要しないといけない事案は少なくないと思います。

善意総和型再建により、多くの方の善意に助けられる事で、当事者が満足する成果が得られました。

障がい者向け職能支援施設という事で、地域に引き続き貢献して頂き、多くの障がい者が職業に付けるように、心から願います。